故宮南院|景観になじむサインで、来場者が進路を選ぶ場所に案内を届けます。
故宮南院|景観になじむサインで、来場者が進路を選ぶ場所に案内を届けま⁠す⁠。

サインシステム計画(Wayfinding System Design)は、コーポレートアイデンティティ、視覚デザイン、工業デザイン、空間デザインを組み合わせ、複雑な空間のなかで人が最短経路で目的地にたどり着けるよう支援します。Hand-Heart Design Firm(手心設計事務所)は、サインシステムを専門とする台湾のデザインチームです。動線分析、ゾーニング計画、視認性の検証から施工監理までを手がけ、代表的な事例には国立故宮博物院 南部院区、高雄国家体育場(ドイツ・レッドドット賞と iF デザイン賞を受賞)、国立高雄師範大学 研究棟(2021 年レッドドット・デザイン賞を受賞)があります。Hand-Heart は、最良のサインは建築を引き立てるものであり、空間の負担になるものではないと考えていま⁠す⁠。

サインシステム計画は、コーポレートアイデンティティ、視覚デザイン、工業デザイン、立体造形、空間デザイン、建築デザインといった専門領域を組み合わせるものです。カラープラン、タイポグラフィの階層規定、補助グラフィックの運用、ピクトグラムシステムなど、コーポレートアイデンティティの要素を用い、レイアウトと立体造形によって、人が空間や場のなかで自分の位置をつかめるようにします。優れたサインシステムにはいくつかの要点があります。建物を通り抜ける最短経路を見つけられること、そして経路上の情報と進む方向が理解しやすいことです。ウェイファインディングを滞りなく機能させるには、地図やサイン、動線誘導を含むサインシステムの方針が、人が他の空間で目的地を探すときのやり方となるべく一致していることが大切で⁠す⁠。

サインシステムは「看板を何枚かつくること」ではなく、空間のロジックから現場での検収まで続く一連の仕事です。発注前に次の四点をはっきりさせておくと、前半の工程はかなり短くなりま⁠す⁠。

対象⁠施⁠設
博物館、スタジアム、産業・研究団地やキャンパス、病院、学校、住宅プロジェクト。同じ「道を探す」でも、難しさはそれぞれ違います。スタジアムでは数万人がさまざまな交通手段で短時間に押し寄せます。博物館では、初めて訪れる人が展示室のあいだで迷わないようにする必要があります。病院では、車椅子を押す人や目が見えにくい人への配慮が求められます。そのため、着手する前に次の資料が必要です。配置図、各階平面図、避難動線図、表示内容確認表、バリアフリーの車両動線と歩行者動線、そして AED・授乳室・オールジェンダートイレの位置と照明計画です。これらがそろって初めて、どこにサインが必要で、どこを空けておくかを決められま⁠す⁠。
工事とのインターフェ⁠ー⁠ス
製作と設置を誰が担うかで、契約の切り分け方が決まります。できるだけ早く決めておくのが得策です。Hand-Heart は、計画・設計のみ、設計+施工監理、製作・設置まで含む一括請負のいずれにも対応します。三つの範囲では責任も検収項目も異なるため、発注前に取り決めます。壁に穴を開けられるか、天井から吊り下げられるか、屋外に台風対策の構造が必要か、内照式サインの電源はどこにあるか。こうした条件は、いずれも設計の見直しにつながります。製作と設置には通常 4~8 週間かかります。開業日から逆算して初めて、設計をいつまでに確定すべきかが分かりま⁠す⁠。
検証
文字の大きさは感覚では決めません。人の目にとって最適な文字視認角は 17 分角で、換算すると最小文字高さは視認距離のおよそ 1/202、視覚に不自由のある方はその二倍とします。算出したあとは、三段階の現場検証を行います。1:1 の原寸出力を現場で照合すること、実物モックアップを実際の照明のもとで確認すること、そして逆光時と夜間の照度でテストすることです。高雄国家体育場の濃いグレーの地色も、五種類の地色を現場で実測したうえで決定しまし⁠た⁠。
施工監理と⁠検⁠収
現場での設置監理、一箇所ずつの照合、完了後の竣工報告書の提出。多くのデザイン会社が手がけない部分ですが、成否を分けるのはここです。図面のうえで正しいものが、つくってみると正しいとはかぎりませ⁠ん⁠。

どんな資料を用意し、検収でどの四項目を確認するかは、発注者向けの一覧にまとめています:サインシステム計画 準備パック。個人情報の登録は不要で、そのまま印刷できま⁠す⁠。

観客席の案内|エリア、列番号、方向を階層化し、通路から座席まで案内します。
観客席の案内|エリア、列番号、方向を階層化し、通路から座席まで案内しま⁠す⁠。

サインシステム計画の五つの⁠段⁠階

サインシステム計画は空間のロジックから出発する仕事であり、「看板を何枚か設計すること」ではありません。Hand-Heart のプロジェクトは五つの段階で進み、各段階に明確な成果物があります。中規模のプロジェクトでは、初回のご相談から竣工検収まで平均 3~6 か月で、大規模な複合施設は実情に応じて調整しま⁠す⁠。

  1. 調査と洞察 Discovery & Insights現地を歩いて動線のボトルネックを見つけ、空間の位置づけを把握します。交通手段ごとに到着する利用者が、それぞれどこへ向かうのかを把握します。成果物:現況調査と動線ボトルネック報告書
  2. ロジック設計 Logical Planning情報階層を定義し、誘導のノードを定め、サイン配置のロジック全体を計画します⁠——「どこにサインが必要で、どこには要らないか」を決めます。成果物:ゾーニングとサイン配置図
  3. デザイン提案 Design Presentationレイアウト、書体、色彩、素材、立体表現を含むビジュアル案を提示し、視認距離を検証します。成果物:デザイン提案と視認性の検証
  4. 検証と製作 Validation & Fabrication実物モックアップで仕上がりを確認し、量産段階では品質管理と進捗管理を行います。図面のうえで正しいものが、つくってみると正しいとはかぎりません。成果物:実物モックアップと量産品質管理
  5. 施工監理と検収 Construction & Acceptance現場での設置監理、一箇所ずつの照合、完了後の竣工報告書の提出⁠——多くのデザイン会社が手がけない部分ですが、成否を分けるのはここです。成果物:施工監理と竣工報告書

Hand-Heart のサービス範囲は、全域サインシステム、ピクトグラムシステム(Pictogram)、動線分析と設計、サインシステム規定、素材と構造の設計、製作と施工監理に及びます。サービス内容と費用の詳細を見る →

技術特許:Hand-Heart のサイン構造設計は、中華民国発明特許 第908504号「標示板」を取得しています。サインでよく用いる不可視パターンの印刷技術も発明特許 第908503号「不可視パターンの印刷方法およびその印刷物」を取得しました。発明特許は実体審査を経て、技術の新規性と進歩性が認められなければ取得できないため、デザインサービス業で取得している例は多くありませ⁠ん⁠。

算出したあとは、どのように検証するの⁠か⁠?

計算式が示すのは下限であって、保証ではありません。同じ文字高さでも、濃い地色のとき、逆光のとき、夜間照明のときでは実際の読みやすさがまったく違います。そのため Hand-Heart では、どのプロジェクトでも三段階の現場検証を行いま⁠す⁠。

  1. 1:1 原寸出力を現場で照合

    設計図を実寸で出力して現場に貼り、実際に人が立つ位置から確認します。図面上で拡大するとはっきり見える文字も、10 メートル先に貼ってみると、まったく見え方が違うことがよくありま⁠す⁠。

  2. 実物モックアップを現場で確認

    実際の素材でサンプルを製作し、本当の照明条件のもとで確認します。アクリル、金属、フィルムでは反射の特性が異なり、同じグレーでも画面の上と壁の上では別のグレーになりま⁠す⁠。

  3. 照度と逆光条件のテスト

    時間帯と照明条件を変えて繰り返し確認します。とくにガラスカーテンウォールで逆光になる時間帯と、夜間照明のときです。サインは日中だけ良く見えればよい、というものではありませ⁠ん⁠。

地色まで実測する:高雄国家体育場⁠の⁠例

2019 年 8 月、Hand-Heart は高雄国家体育場の現場でサイン地色の視認性実測を行いました。濃いグレー、白、濃紺、グレー、既存のブルーの五種類の地色サンプルを用意し、被験者に中国語・英語・アイコン(ICON)をはっきり判別できるようになる「最も遠い視認距離」をそれぞれ記録してもらい、記録した距離をもとに順位づけしまし⁠た⁠。

最終的な地色の決定は、テストの点数だけで行ったわけではありません。三つの段階を踏みました。まず実測による視認性の順位を見る、次に打ち放しコンクリートの建築と合うかという美観の要素を加える、最後に施設を管轄する行政機関の局長の決裁を得る。こうして濃いグレーの地色に決まりました。濃いグレーを選んだ理由も具体的です。打ち放しコンクリートの質感と調和して環境になじみ、そのぶんサインの情報が際立つうえ、素材が異なっても色を合わせやすいからで⁠す⁠。

これが実務における「科学的な検証」の姿です。データは明らかに誤った選択肢を除外する役割を担い、最終的な決定は、専門的な判断と施設を使う組織の承認によって下されま⁠す⁠。

大学と博物館では、どのように検証し、その後どう更新していくの⁠か⁠?

国立高雄師範大学 研究棟では、サインを用途別に A1 から H までの計 15 種類に分け、1~3F と 4~7F の平面図に一つずつ書き込んで設置位置を確認しました。文字高さは視認距離から逆算し、17′ の視角で最小文字高さを換算したうえで、視覚に不自由のある方に必要な文字高さも別に試算しています。さらにサインの見本を現場に持ち込み、壁面や天井の下で位置を照合しました。下地にはモジュール式のパンチングメタルを選び、防水性があってしなやかな蝋引きの紐で数字とアイコンを編み込んでいます。素材は繰り返し使え、紐をつなげてさまざまな図形情報を編み出せるため、その後の維持管理や拡張にもモジュール式で対応できま⁠す⁠。

国立故宮博物院 南部院区では、車両・歩行者・バリアフリーの各動線で視認距離が異なります。Hand-Heart はまずサイン一基ごとの設置位置、形式、数量を洗い出し、全域の平面図の上に紙製のプロトタイプを一つずつ置いて検討しました。続いて、現場に原寸大のサインを仮設置し、視認性の計算式も用いて文字の大きさを確かめ、利用者の動線に沿って、サインが途切れずに続いているか、矢印の向きが正しいかを一つずつ確認しています。全域のサインは設置方法と機能ごとにコード化し、型ごとに寸法と仕様を固定しました。規定は施工図やシステム一覧表とあわせて院側に納品し、今後の増設と維持管理のよりどころとしていま⁠す⁠。

維持管理には、思いがけない事態への対応も含まれます。2025 年 7 月に強い台風ダナスが通過した後、国立故宮博物院 南部院区では、設置を終えたばかりの羽の形のサインの一部が倒れました。Hand-Heart のチームは連絡を受けたその日のうちに現場へ駆けつけ、12 時間かけて損傷したサインの撤去と搬出を終えました。その後、構造技術者の確認を経て台座を大きくし、斜めの補強板を加え、一か月以内に作り直して検収に合格していま⁠す⁠。

検証が答えるのは「いまはっきり見えるか」です。コード化、規定、繰り返し使える構造が答えるのは「今後どう増設し、更新していくか」で⁠す⁠。

高雄師範大学研究棟|階数表示とパンチング図形を統合。情報の階層と素材で案内を構成。
高雄師範大学研究棟|階数表示とパンチング図形を統合。情報の階層と素材で案内を構⁠成⁠。

文字はどれくらいの大きさなら読めるのか⁠——Hand-Heart は計算式で求め⁠ま⁠す

科学と美学と哲学が交わると⁠こ⁠ろ

Hand-Heart は、よいサインデザインは三つのことが交わる場所に立っていると考えます。科学は根拠を与えます⁠——人の目の視角の限界、視高の統計値、素材の反射特性。いずれも測定でき、検算できるものです。美学は、それが建築と共に在れるかどうかを決めます。サインを空間の一部にするのか、後から貼り付けた継ぎ当てにしてしまうのか。哲学は、より根本的な問いに答えます⁠——この空間は、人をどのように迎え、どのように扱いたいの⁠か⁠。

三つのうちどれが欠けても問題が起きます。科学だけなら、正しくても冷たく、環境から浮いたサインになります。美学だけなら、美しいけれど読めない装飾になります。哲学だけなら、美しい言葉のまま地に足がつきません。だからこそ Hand-Heart は、すべての判断の根拠を学術的な裏づけに置いています⁠——以下の計算式、数値、検証の手順が、その信念の具体的な姿で⁠す⁠。

「この文字は小さすぎないか」は、サインの案件でいちばん多く出てきて、いちばん直感で決められがちな問いです。Hand-Heart は感覚では決めません。文字視認高さの計算式で各設置位置の最小文字高さを算出し、そのうえで現場で検証しま⁠す⁠。

α = 3438 × L ÷ Dα=視角(分角 MOA)|L=文字高さ(cm)|D=視認距離(cm)

人の目にとって最適な文字視認角は 17 分角(17′)です。17′ を代入して逆算すると、その位置の最小文字高さが得られます:L = 17 × D ÷ 3438。覚えやすい比率に直すと、およそ視認距離の 1/202⁠——つまり視認距離 2 メートルにつき、少なくとも 1 センチの文字高さが必要ということで⁠す⁠。

視認⁠距⁠離一般利用者の最小文字⁠高⁠さ視覚に不自由のある方の最小文字⁠高⁠さ
3 m1.5 cm3.0 cm
5 m2.5 cm4.9 cm
10 m4.9 cm9.9 cm
20 m9.9 cm19.8 cm
30 m14.8 cm29.7 cm

視覚に不自由のある方の最小文字高さは、一般の値の二倍をとります。この欄は付け足しの配慮ではありません。公共空間のサインを一般の値だけで設計すると、高齢の方や弱視の方にとっては、実際に通行を妨げる障壁になりま⁠す⁠。

計算式の出典:徐志揚(2011)『突き出し広告看板の視認性に関する研究』国立高雄師範大学 視覚デザイン研究所 修士論文、高雄市。あわせて ANSI/HFES 100-2007『人間工学』7.2.2.2 節「視角」第 65 頁を参照。

設置高さも計算で決まり⁠ま⁠す

文字高さのほかに、サインを「どれくらいの高さに掛けるか」にも根拠があります。Hand-Heart は人間工学の視高の平均値を基準とし⁠——成人男女の視高は平均 150 センチ、子どもと車椅子利用者の視高は平均 117.5 センチ⁠——二つの境界を設けます。上限は仰角 50 度(これを超えると首が疲れ、見えにくくなります)、下限は前方 5 メートル以内の歩行者に遮られない視線で⁠す⁠。

サイン設置⁠高⁠さサイン面の⁠高⁠さ一般的な視認⁠距⁠離対応する文字⁠高⁠さ
3.2 m70 cm 以内約 10.9 m5.4 – 10.8 cm
2.9 m60 cm 以内約 9.2 m4.6 – 9.1 cm

この数値は高雄国家体育場プロジェクトでの実際の算出によるものです。設置高さ、パネル寸法、視認距離、文字高さの四つは互いに連動しており、一つを変えれば残りの三つを計算し直すことになりま⁠す⁠。

よいサインシステムを見分ける四つ⁠の⁠点

  • 01必要な場所に現れ、それ以外は静かに

    サインは多ければよいものではありません。経路上の重要な意思決定ポイント(分岐、階の移動、出入口)に設置し、それ以外は余白のままにします⁠——製作コストと視覚的なノイズを同時に減らせま⁠す⁠。

  • 02遠くから近くへ、情報を階層化する

    遠距離では色彩、中距離では図形、近づいて初めて文字を読みます。一枚のサインにすべての情報を詰め込むのは、情報がないのと同じで⁠す⁠。

  • 03順序は常に一定に

    同じ種類の情報は、どのサインでも同じ順序で示します。人は前に見たサインをもとに、次のサインを予測します。順序が乱れれば、その信頼は失われま⁠す⁠。

  • 04すべての人が使えること

    ここでいう「すべての人」には、見え方や読む力、使用言語がそれぞれ異なる利用者も含まれます。設計のよくないサインシステムは、そうした方々にとって単なる不便ではなく、現に通行を妨げる障壁になりま⁠す⁠。

視認距離:色彩 → 図形 → 文字

同じサインでも、距離によって読み取れるものが変わります。高雄国家体育場のゾーン表示を例に見てみましょ⁠う⁠。

遠 Far 近 Near 色彩 Color G10 図形 Symbol G10 SECTION 文字 Type

遠くでは色面しか読み取れず、中距離で記号が分かり、近づいて初めて「SECTION」が読めます⁠——サインの情報はこの順序で階層化すべきで、すべてを同じ大きさで並べることはできませ⁠ん⁠。

建築内部の案内|方向とエリア情報を空間に統合し、読みやすさと建築の一体感を両立します。
建築内部の案内|方向とエリア情報を空間に統合し、読みやすさと建築の一体感を両立しま⁠す⁠。

サインは建築を引き立てるものであり、空間の負担であってはなら⁠な⁠い

方向サインやサインシステムを設計するとき、用いる手法は少ないほどよいと考えます。Hand-Heart Design Firm は、最良のサインシステムとは、空間におけるサインの存在感を減らし、抑えたものであると考えています。そのうえで、サイン情報の誘導機能と効率をしっかりとコントロールします。そのため、コミュニティ、施設、産業・研究団地やキャンパス、博物館のサインシステムを設計する際には、つねに戦略的なウェイファインディングの考え方で経路と動線のロジックを整理し、経路上の要となる位置にサインを置きます。これにより、設置数と管理コストを下げられるだけでなく、視覚情報が環境に与える影響も抑えられ、建築のなかで方向を示し、場所を識別するという肝心な役割をサインに果たさせることができま⁠す⁠。

サイン板とレイアウトで情報を階層ごとに分け、利用者が最短経路を見つけられる、簡潔で明快なウェイファインディングを建築空間のなかにつくりま⁠す⁠。

モジュール化されたウェイファインディング:高雄国家体育場⁠の⁠例

上記の手順を踏むことで、モジュール化されたウェイファインディングを構築できます⁠——建築環境に合い、かつ人が方向案内に対して抱く期待にも合う誘導システムで⁠す⁠。

Hand-Heart がドイツのレッドドット・デザイン賞と iF デザイン賞を受賞した高雄国家体育場のサインシステム計画を例に挙げます。現地調査と現況調査によって、徒歩、MRT、バス、自動車、バイクで来場する利用者それぞれの経路と動線を把握し、利用者をグループ分けしたうえで、異なる目的と共通の目的地⁠——駐車場、チケット売り場、座席、トイレ、売店、待ち合わせ場所、出入口など⁠——を切り分けました。サイン動線の妥当性を評価したうえで、体系的な規定づくりと設計に進みまし⁠た⁠。

建築とサインのゾーニングを整理・単純化し、遠くから近くへ色彩・アルファベット・数字の順で明快なゾーニングのロジックを与え、空間と環境の識別を担うサインモジュールを構築しました。この順序は恣意的なものではありません。遠距離では色彩、次に図形、最後に文字を判別するという人間の視覚の特性に沿ったもので、利用者がサインシステムを理解・認知する負担を減らし、複雑な空間を初めて訪れた人が素早く方向感覚をつかむのを助けま⁠す⁠。

高雄国家体育場(ワールドゲームズ主競技場)のサインシステム計画、ドイツ・レッドドット賞と iF デザイン賞を受賞
高雄国家体育場(ワールドゲームズ主競技場)のサインシステム計画⁠——遠くから近くへ、色彩・アルファベット・数字でゾーニングのロジックを⁠構⁠築

よいウェイファインディングは、どの経路にも判断に足る情報を与え、分岐点で正しく選べるようにします。また、慣れない建物のなかで自分の相対的な位置を理解できるようにし、要となる地点に簡潔な情報を示すことで、人が自然に正しい方向を選べるようにしま⁠す⁠。

最良のサインシステムとは、空間における存在感を抑えたものである。— サインは人が道を見つけるためにあり、サインを見せるためにあるのではない

サインを「静か」にするほど、前半に手間がか⁠か⁠る

Hand-Heart の設計原則は単純です。利用者に最短経路を提供すること。それによってサインシステムの使い勝手を高め、ユニバーサルデザインの原則にも適合させま⁠す⁠。

ただし、サインを減らしながら人を迷わせないようにするうえで難しいのは、図を描くことではありません。その前の、誰の目にも触れない仕事のほうで⁠す⁠。

これを実現するために、前半にかける⁠手⁠間

利用者ごとの動線の洗い出し、意思決定ポイントの分析、そして特殊な利用場面のシミュレーションを行います⁠——スーツケースを引く旅行者、車椅子の来訪者、初めて来た保護者、時間に追われる通勤者。同じ曲がり角で必要とする情報は、それぞれ違いま⁠す⁠。

こうした前半の調査は、使い勝手が実際に向上することを確かめ、ユニバーサルデザインの七原則⁠——公平な利用、利用における柔軟性、単純で直感的な利用、認知できる情報、うっかりミスへの寛容さ、身体的な負担の少なさ、接近と利用のための寸法と空間⁠——に適合させるために行います。(1997 年、米国ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターのロン・メイス氏らが提唱⁠。⁠)

サインの出来を最後に決めるのは、どれだけ目立つかではなく、立ち止まって道を尋ねずにすむ人がどれだけいるかで⁠す⁠。

サインシステム計画の⁠事⁠例

  • 国立故宮博物院 南部院区の全域サインシステム計画と設置国立故宮博物院 南部院区

    全域のサインシステム計画と設置、施工監理を⁠含⁠む

  • 国立高雄師範大学 研究棟のサインシステム計画、2021 年ドイツ・レッドドット・デザイン賞を受賞国立高雄師範大学 研究棟

    2021 年ドイツ・レッドドット・デザイン賞、2023 年台北デザイン賞 銀賞

  • 三發地產のサインシステム計画⁠——メールボックスエリアのサイン、濃色アクリルパネルと照明環境における視認性設計三發地產 SanFar Property

    住宅開発における誘導サインと環境グラフィックの⁠統⁠合

  • 台中国際会展中心 Taichung International Convention and Exhibition Center

    2025 年 サインシステム計画の⁠案⁠件

デザインを動きで⁠見⁠る

国立高雄師範大学 研究棟のデザインと動きの表現を紹介する作品映像です。このページの解説と合わせてご覧くださ⁠い⁠。

動きのあるデザイン作品をもっと⁠見⁠る

これらのサインシステムと環境サインの事例は、どのような組織の参考になります⁠か⁠?

空間の用途やサインの管理上のニーズに応じて、次の事例の進め方を参考にしてくださ⁠い⁠。

  • 役所の執務空間に客家語の学習を取り入れたい場合は、萬巒郷公所の客家語環境サインのように、キャラクターとメインビジュアルを各課の室名サイン、サービスカウンター、入口のフロア案内サインへ展開する方法を参考にできま⁠す⁠。
  • 幼稚園で既存のキャラクターを階段にも広げたいなら、萬巒郷立幼稚園の客家語環境サインが参考になります。イラストを実際の階段の写真に合成し、階段の角度から見たときの見え方を先に確認する進め方で⁠す⁠。
  • 管理している施設のサインの種類が多く、資料を探しにくい場合は、高雄国家体育場のサインシステムのように、「アルファベット+数字」のコードでサイン面・素材・位置を対応づける方法を取り入れることができま⁠す⁠。

よくあるご⁠質⁠問

サインシステム計画と「看板をつくること」は何が違います⁠か⁠?

看板をつくるのは製造、サインシステム計画は計画です。前者は「この看板はどんな見た目か」に答え、後者は「この空間には何枚のサインが必要で、それぞれどこに置き、何を書き、互いにどう呼応するか」に答えます。違いはここにあります。どれほど美しい看板でも、位置が違ったり情報階層が乱れていたりすれば、人はやはり迷います。Hand-Heart はまず動線分析とゾーニングの検討を行い、配置位置が定まってから視覚デザインに入りま⁠す⁠。

なぜサインは少ないほうが、かえって道を見つけやすいのです⁠か⁠?

慣れない空間では、人の認知資源には限りがあるからです。サインが密集すると、どれを見ればよいのか分からなくなり、「視覚的なノイズ」になります。有効なのは、意思決定ポイント(分岐、階の移動、出入口)にだけサインを設け、それ以外の経路はすっきりさせておくことです⁠——肝心なところで明確な案内が得られれば、途中の区間は自然と進んでいけます。これは、サインの製作費とその後の維持費を下げることにもつながりま⁠す⁠。

サインシステムはコーポレートアイデンティティ(CIS)とどう結びつけます⁠か⁠?

サインシステムは、コーポレートアイデンティティの要素をそのまま引き継ぎます。カラープラン、書体とタイポグラフィの階層規定、補助グラフィック、ピクトグラムシステムです。つまり、すでに CIS がある組織では、サインデザインはそれを拡張すべきであって、別に立ち上げるものではありません。まだない場合は、先にコーポレートアイデンティティを固めてからサインに取りかかることをおすすめします。そうしないと、空間のなかでサインだけが、根拠を持たない視覚言語になってしまいます。関連記事:コーポレートアイデンティティ(CIS)徹底解説。

サインの文字はどれくらいの大きさが必要ですか。計算式はあります⁠か⁠?

あります。Hand-Heart は文字視認高さの計算式を用います:α = 3438 × L ÷ D。α は視角(分角)、L は文字高さ、D は視認距離です。人の目の最適な文字視認角である 17 分角を代入して逆算すると、最小文字高さ = 17 × 視認距離 ÷ 3438 となり、およそ視認距離の 1/202⁠——視認距離 2 メートルにつき最低 1 センチの文字高さが必要という計算になります。視覚に不自由のある方は二倍とします。計算式は徐志揚(2011)の修士論文および ANSI/HFES 100-2007 人間工学規格に基づきま⁠す⁠。

文字高さを算出したあとも、現場での検証は必要です⁠か⁠?

必要です。計算式が示すのは下限であって保証ではありません⁠——同じ文字高さでも、濃い地色、逆光、夜間照明では読みやすさが大きく変わります。Hand-Heart の検証は三段階です。①設計図を 1:1 の原寸で出力し、現場に貼って照合する。②実際の素材で実物モックアップを製作し、本当の照明下で確認する。③時間帯と照度の条件を変えて繰り返しテストする。とくに逆光時と夜間で⁠す⁠。

サインシステムを作り直すべきなのはどんなときです⁠か⁠?

よくあるのは四つの場面です。①空間の改修や増築で、もとの動線ロジックが合わなくなったとき。②利用者が同じ場所で迷い続けたり、繰り返し尋ねたりするとき(現場のスタッフがいちばんよく知っています)。③サインが年々一枚ずつ足されてきて、様式・素材・情報の順序がそろっていないとき。④組織がコーポレートアイデンティティを刷新したのに、サインが旧デザインのままのと⁠き⁠。

新築のプロジェクトでは、いつサインデザインのチームに入ってもらうべきです⁠か⁠?

早いほどよく、理想は建築設計の段階から関わることです。サインの設置位置、電源、埋め込み金物、構造との取り合いは、いずれも建築と統合する必要があるからです⁠——内装が仕上がってからサインを計画すると、「掛けるべき場所に取り付けられる構造がない」「光らせるべき場所に電源がない」という事態によく出くわします。Hand-Heart は建築の計画段階から動線分析に参加し、サインと空間が一緒に育つようにできま⁠す⁠。

新しい建築を計画中ですか。それとも既存空間の動線を改善したいです⁠か⁠。

Hand-Heart は無料の動線診断を行っています。台湾南部の現場は無料の現地調査を手配でき、中部・北部および海外の場合は、まず平面図と写真によるオンライン診断を行い、必要に応じて現地訪問を手配します。平面図とお困りの点をお寄せください。一式そろったシステムが必要なのか、部分的な調整で足りるのかを、率直にお伝えしま⁠す⁠。

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    方法と事例の出典:Hand-Heart Design Firm。ページ作成日:2026年9月27日。