何を残し、何を変えるか
Shakespeare & Co.
シェフ、パン、猫のモチーフを残し、比率・ロゴ・配色を見直しました。なじみのあるキャラクターを保ちながら、分散していた視線をまとめています。
Cao Yan Suo
天然原料とコールドプロセス製法を土台に、位置づけとロゴの骨格を見直しました。商品の特長を「いたわり・天然・専門性」へつなげています。
先に結論から:ブランドリニューアル(Rebranding)はロゴを新しくすることではなく、「ブランドと市場の関係」を定義し直すことです。ポジショニングからアイデンティティ、コミュニケーションの方法までを含む体系的な仕事です。うまくいけば、長くお付き合いのあるお客様は「変わった」ではなく「良くなった」と感じます。本記事では Hand-Heart Design Firm が実際に手がけた KYMCO(光陽工業)、AcBel(康舒科技)、瑞儀光電、莎士比亞烘焙坊(Shakespeare & Co.)などの事例をもとに、ブランドリニューアルの 4 つのタイミング、6 つのステップ、旧ロゴを残すべきかどうかをご説明し、よく聞かれる 5 つの質問にもお答えします。

ブランドリニューアルは、長年かけて積み上げた認知度を新しい方向と引き換えにすることです。方向が正しければ飛躍になり、間違えればゼロからのやり直しになります。そこで進め方をお話しする前に、まず三つの質問で、いま必要なのが本当にリニューアルなのかをご確認ください。
- 質問 1
- 売っているもの、対象とするお客様は、ブランドを立ち上げた当時と同じですか。違う(事業転換、市場の変更、合併、上場)→ リニューアルが適した手段です。同じ → 次へお進みください。
- 質問 2
- お客様は御社を認識していますか。認識しているなら、何か誤って受け取られていませんか。正しく認識されていて、ただ見飽きただけ → 認知度を維持しながら雰囲気を新しくする部分的な更新をおすすめします。リニューアルは必要ありません。認識はされているものの一世代前の印象のまま、または店舗ごとに見た目が違う → リニューアル、または体系的な更新をおすすめします。
- 質問 3
- 「何になりたいのか」について社内で合意はありますか。ない → まず合意形成のヒアリングを行い、方向が定まってから始めてください。この段階でリニューアルを始めると、デザインが社内の綱引きの場になります。ある → 始められます。
もう一つ、私たちがはっきりお止めする場合があります。製品やサービス自体がまだ固まっていないときです。リニューアルは長所を大きく見せますが、問題も同じように大きく見せます。イメージが体験より先に進むと、その差がかえってブランドを傷つけます。まず体験を整え、そのあとイメージを追いつかせてください。どちらに当てはまるか分からない場合は、ご相談内容をお送りください。まずは三十分ほどお話ししましょう。お話ししたうえで進めないという結論でも、まったく問題ありません。
ブランドリニューアルはいつ行うべきか?よくある 4 つのタイミング
Hand-Heart Design Firm が近年実際に手がけたリニューアル案件から整理すると、企業がブランドリニューアルを始めるタイミングは主に四つあります。
事業転換により、事業の重心が変わる
ブランドの見え方が旧事業のままで、新しい方向を言葉にできない。事例:NTI(南台彩藝)はグリーン印刷の強みを活かして「グリーン印刷コンセプト工場」へ転換し、積み重ねた紙のネガティブスペースで樹形をつくるアイデンティティによって、転換を目に見えるかたちにしました。瑞儀光電は「顧客を中心とした光学ソリューションの提供者」へ転換し、「光が内から外へ広がる」という考えで CIS を刷新しました。
イメージが古くなり、新しい世代の消費者との距離が広がる
製品の力は健在でも、ブランドが「一世代前に見える」。事例:KYMCO は「未来・国際・テクノロジー」を目標に、ブランドと店舗の全面更新を行いました。既存のスローガン「Win My Heart」から、光環・光芒・光速という三つのキーワードを取り出し、ブランドの精神を、お客様が店舗に入った瞬間に感じられる体験に変えています。
急速な出店で、イメージがそろわなくなる
店舗ごとに見た目が違い、ブランドとしての印象が薄まる。事例:ドリンクスタンドのブランド Sprino Tea(三分春色)は出店期にアイデンティティと店舗のリニューアルを行い、モジュール化した設計で空間の雰囲気・看板・メニュー・イメージウォールを統一しました。以後の新店舗も、すべて同じ基準に沿って出店できるようにしています。
上場・合併・国際化などの企業としての節目
ブランドがより大きな舞台に立つには、それに見合った見え方が必要になります。事例:電源大手の AcBel(康舒科技)は「サステナブルな発展」と「イノベーション」を軸に国際的なブランドリニューアルを行い、エネルギーテクノロジー分野における役割を定義し直しました。
この三つの場合は、もう少し待つことをおすすめします
①社内でまだ合意がない。経営者はブランドを若返らせたい、営業は認知度を失うことを心配している、二代目はすべてをつくり直したい。この状態でリニューアルを始めると、過程が社内の綱引きになり、デザインはその戦場になってしまいます。まず社内の合意形成ヒアリングを行い、方向が定まってから始める方法もあります。
②製品やサービス自体がまだ固まっていない。ブランドリニューアルは長所を大きく見せると同時に、問題も一緒に大きく見せます。イメージが体験より先に進むと、その差がかえってブランドを傷つけます。まず体験を整え、そのあとイメージを追いつかせるのがよいでしょう。
③ただ見飽きただけ。市場における御社の認知度は、長い年月をかけて積み上げた資産です。明確な理由なく替えることは、その年月をゼロに戻すのと同じです。この場合も、認知度を維持しながら新しい雰囲気に変える部分的な更新を検討できます。
いまはどの状況に当てはまるでしょうか。まだ分からない場合も、まずはご相談ください。現状の評価をお手伝いします。お話ししたうえで進めないという結論でも、まったく問題ありません。

記憶に残るブランドには、一言で説明できる核がある
人に覚えられ、見分けてもらえるブランドには、シンプルで明確な、わかりやすい核となる価値とマインド・アイデンティティ(MI)が必要です。一言で、ブランドの核を誰もが理解できる状態にします。
Hand-Heart は「見えない価値を見る」ことを大切にしています。私たちが築くブランド価値には四つの方向があります。上・下・内・外——川上へ、川下へ、社内の仲間へ、外の市場へ。
よいマインド・アイデンティティ(MI)は、パートナーの善意を最大限に引き出せるものであるべきです。そこからブランドの結束力が生まれます。ここを正しく押さえて初めて、その後のビジュアルで表現すべき中身が生まれます。

ブランドリニューアルはどう進むのか?6 つのステップ
Hand-Heart Design Firm のブランドリニューアルは六つのステップで進みます。各ステップに明確な成果物があり、変更の幅が大きい案件では、通常「月」単位の期間がかかります。
ブランド健診とリサーチ
経営者へのヒアリング、顧客アンケート、市場分析を通じて、「残すべき資産」と「手放すべき重荷」を見つけます。莎士比亞烘焙坊(Shakespeare & Co.)のリニューアルでは、二百件を超えるアンケートと創業者へのヒアリングから、品質・生活・感情という三つの核となる価値を導きました。
ポジショニングの見直しとブランド戦略
「ブランドが誰に、どのような姿勢で語りかけるのか」に答えます。天然コールドプロセス液体石けんのブランド Cao Yan Suo(艸研所)のリニューアルでは、まずポジショニングを定義し直し、伝える相手を定めてから設計に入りました。戦略を先に立てることで、見た目はきれいでも効果のないデザインになるのを防げます。
アイデンティティシステムの刷新
新しいポジショニングに合わせて、ロゴ・ロゴタイプ・カラープラン・補助図形を設計し直します。瑞儀光電の CIS 更新では「光が内から外へ広がる」をコンセプトとしました。鋭い折れ線は研究開発力を、やわらかな曲線は共創の親しみやすさを表しています。
アプリケーション展開とブランドガイドライン
アイデンティティを名刺・パッケージ・ウェブサイト・車体などの実際の媒体に落とし込み、ブランドガイドラインを作成します。PORClean(寶可齡)のブランド資産構築では、ビジュアルのガイドラインとコミュニケーション戦略を同時に定め、社内チームと取引先が拠り所を持てるようにしました。
空間と店舗への導入
小売やサービスのブランドにとって、店舗はブランドの中に「入っていける」場所です。KYMCO と Sprino Tea(三分春色)のリニューアルは、いずれも店舗の動線・看板・陳列にまで及び、多拠点で再現しやすいモジュール化した設計を採りました。
社内外へのコミュニケーションと公開
切り替えの進め方と公開時のコミュニケーションを計画し、まず社員が理解し、その後に市場が目にする順序をつくります。リニューアルの最後の一歩は、社員が「なぜ変えたのか」を自分の言葉で説明できることです。そこで初めてブランドストーリーが成り立ちます。
Hand-Heart Design Firm が手がけたブランドリニューアルの事例は?
Hand-Heart Design Firm(手心設計事務所)は高雄に拠点を置くブランドデザイン会社です。ブランドとサインシステム計画の実績は 500 件を超え、ドイツの Red Dot Design Award、iF Design Award、日本の GOOD DESIGN AWARD などの国際的な賞を受けています。以下は近年の代表的なブランドリニューアルの実績です。クリックすると全過程をご覧いただけます。
2023KYMCO ブランドリニューアルと店舗デザイン二輪業界最大手のブランドと店舗の全面更新
2023莎士比亞烘焙坊(Shakespeare & Co.)ブランドリニューアル200 件超のアンケートから核となる価値を導いた、ぬくもりのあるリニューアル
2023Sprino Tea(三分春色)ブランドリニューアルと店舗デザインドリンクスタンドの出店期における、モジュール化したアイデンティティの統一
2024Cao Yan Suo(艸研所)ブランド戦略とリニューアル天然コールドプロセス液体石けんのポジショニングの見直し
2024PORClean(寶可齡)ブランドイメージの更新口腔洗浄器の技術ブランドにおけるブランド資産の構築
2025AcBel(康舒科技)国際ブランドリニューアルサステナビリティとイノベーションで、エネルギーテクノロジーにおける役割を定義し直す
2025NTI(南台彩藝)ブランドリニューアルグリーン印刷コンセプト工場への転換を示すアイデンティティ
2026瑞儀光電 Radiant コーポレートアイデンティティ(CIS)の更新「光が内から外へ広がる」上場企業の CIS 更新
「美学」という言葉のもとの意味は「感性的認識の学」
美学の父と呼ばれるアレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテン(Alexander Gottlieb Baumgarten)が Aesthetics という言葉を提唱したとき、その原意は感性的認識の学でした。主観的な好き嫌いではなく、人が感覚を通してどのように世界を認識するかを研究するものです。
だからこそ私たちは、美しいものは感覚的な心地よさをもたらすものであり、それは分析も設計もできると考えています。
ブランドリニューアルの過程では、ブランドのすべての接点が一貫した心地よい体験をもたらしているかを分析します。カスタマージャーニーマップで改善できるポイントを見つけ、デザインを、最後に表面を飾るだけのものとしてではなく、体験を高めるための主要な手段として用います。
ブランドリニューアルとは?
ブランドリニューアル(Rebranding)とは、企業がブランドを体系的に立て直すことを指し、通常は三つの層を含みます。ブランドポジショニングの調整(「私たちは誰で、誰に語りかけるのか」に答え直す)、コーポレートアイデンティティ(CIS)の更新(ロゴ、色、書体、補助図形などのビジュアルシステム)、そして対外コミュニケーションの方法の変更(トーン、チャネル、運用ガイドライン)です。目的はお客様の心の中にある印象まで変えることであり、外観だけを替えることではありません。
ブランドリニューアルは「ブランドリフレッシュ(Brand Refresh)」とは異なります。問題がビジュアルの古さや時代遅れの見え方だけであれば、既存のアイデンティティを手直しすれば足ります。問題がポジショニングのぼやけ、市場とのずれ、事業領域の変化にある場合に、本当のブランドリニューアルが必要になります。判断のしかたは下表をご覧ください。
| ブランドリフレッシュ(Brand Refresh) | ブランドリニューアル(Rebranding) | |
|---|---|---|
| 解決する問題 | ビジュアルの古さ、細部の時代遅れ | ポジショニングのぼやけ、市場や世代とのずれ、事業転換 |
| 変更の範囲 | ビジュアルの一部(書体、配色、レイアウト) | ポジショニング+アイデンティティシステム+運用ガイドライン+コミュニケーション戦略 |
| 主な成果物 | 更新版のビジュアル案 | ブランド戦略、アイデンティティシステム一式、ブランドガイドライン、導入計画 |
| 適した状況 | ブランドの方向は正しく、ただ「着古した」だけ | ブランドが向かう先へ、いまの見え方では届かない |
リニューアルでは、旧ロゴをすべて替えなければなりませんか?
必ずしもそうではありません。まず、旧ロゴのなかに、お客様がすでに見慣れていて、しかも新しい方向とぶつからない要素があるかを確かめます。あれば、それを残して新しいアイデンティティシステムに組み込みます。ない場合や、旧ロゴそのものが手放したいポジショニングを象徴している場合にだけ、すべてをデザインし直します。
AcBel(康舒科技)の国際ブランドリニューアルは、古い要素を残した例です。企業ビジョン「Accelerate Better Living」を出発点に、新しいロゴには現代的で流れるようなデザイン言語を用いながら、旧ロゴの二色の色面を取り入れ、さらに「+」の記号、光、バッテリーのイメージを加えました。ブランドの継承と転換を、一つのアイデンティティシステムのなかで見て取れるようにしています。Hand-Heart は造形とカラーシステム、モーションデザインにも携わりました。
リニューアルの重心をポジショニングとガイドラインに置いた案件もあります。PORClean(寶可齡)のブランドイメージの更新では、口腔洗浄器によくある「機能性」を前面に出すポジショニングをとらず、使い心地と暮らしの質感で市場とコミュニケーションをとることにしました。あわせて、ブランドの標準色や指定書体などのガイドラインも定めています。
どれを残すべきか迷ったら、このページの冒頭にある三つの質問に戻ってみてください。お客様にすでに認識されていて、しかも誤って受け取られていない部分こそ、たいてい残す価値のある資産です。

デザインを動きで見る
AcBel(康舒科技)のデザインと動きの表現を紹介する作品映像です。このページの解説と合わせてご覧ください。
丁丁薬局と瑞滬企業のブランドアイデンティティ刷新の事例は、どのような企業の参考になりますか?
ブランドの核となる価値を整理したい企業や、アイデンティティをウェブサイトまで展開したい企業は、次の二つの状況と照らし合わせて、参考にする進め方を選んでください。
- 薬局でアイデンティティの刷新を予定していて、社内で核となる価値をまだ整理しきれていない場合は、丁丁薬局のブランドアイデンティティの事例のように、まず経営層、部門の責任者、現場の薬剤師にヒアリングする方法を参考にできます。
- ロゴタイプと色彩がすでに決まり、これからウェブサイトを更新するところなら、同じビジュアル言語を三枚のウェブサイト用メインビジュアルへ展開した瑞滬企業 × 震南鐵線のブランドアイデンティティ刷新の進め方が参考になります。
ブランドリニューアルのよくある質問
ブランドリニューアルとロゴの変更は何が違いますか?
ロゴの変更は視覚的な記号を更新するだけで、ブランドリニューアルの中で最も表層の部分です。完全なブランドリニューアルはまずブランドポジショニングと核となる価値に立ち返り、誰に何を語りかけるのかを定義し直したうえで、アイデンティティシステム、運用ガイドライン、対外コミュニケーションを順に更新します。ビジュアルの古さだけが問題であれば、部分的なブランドリフレッシュ(Brand Refresh)で足ります。
ブランドリニューアルに適した時期はいつですか?
よくある四つのタイミングがあります。事業転換や事業の重心の変化(例:NTI/南台彩藝のグリーン印刷への転換)、ブランドイメージの陳腐化と新しい世代とのずれ(例:KYMCO)、急速な出店によるイメージの不一致(例:Sprino Tea/三分春色)、上場・合併・国際化などの節目(例:AcBel/康舒科技)です。
ブランドリニューアルで長年のお客様に気づかれなくなり、既存の客層を失うことはありませんか?
うまくいったブランドリニューアルは「継承の中の刷新」です。Hand-Heart はまずリサーチで、お客様が最も大切に思っている資産を見つけ、それを際立たせます。莎士比亞烘焙坊(Shakespeare & Co.)の案件では 200 件超のアンケートから「品質・生活・感情」を導き、新しいアイデンティティの基礎としました。KYMCO の案件では既存のスローガン「Win My Heart」からブランドの精神を取り出し、新しい表現に置き換えました。お客様が共感している核を残し、古くなった表現を更新すれば、長年のお客様は「変わった」ではなく「良くなった」と感じます。
中小企業や地域のブランドにもブランドリニューアルは必要ですか?
必要です。むしろ効果がはっきり表れやすい場合も多くあります。莎士比亞烘焙坊(Shakespeare & Co.)、Sprino Tea(三分春色)、Cao Yan Suo(艸研所)はいずれも中小規模の地域ブランドですが、ポジショニングの見直しとアイデンティティの刷新によって、出店・販路拡大・市場とのコミュニケーションで明確に差別化されたポジションを築いています。
ブランドリニューアルの費用と期間はどう見積もりますか?
一律の料金はありません。費用を左右する要素は四つです。範囲(アイデンティティのみか、戦略・ガイドライン・店舗導入まで含むか)、展開アイテムの数、リサーチの深さ(アンケート/ヒアリング/市場分析)、導入の複雑さ(多拠点ではガイドラインと教育が必要)。よくある三つの依頼範囲の比較は、ブランドデザインのページをご覧ください。初回のご相談は無料です。実際のご要望に沿って範囲を定めてからお見積もりします。
ブランドをリニューアルすべきか迷っていますか?
ご状況をお聞かせください。全面的なリニューアルが必要なのか、部分的な手直しで足りるのか、Hand-Heart が正直にお伝えします。初回のご相談は無料です。お話ししたうえで進めないという結論でも問題ありません。
無料ブランド相談を予約するお電話でもどうぞ +886-7-285-7000|[email protected]