Hand-Heart Design Firm(手心設計事務所)は、国家資通安全研究院(NICS)のブランド応用デザインを担当しました(2025年完了)。既存のロゴを変えないことを前提に、その六角形をもとに補助グラフィックの識別システムを構築しています。「防護シールド、保護のチェーン、両手とハート」のイメージを取り入れ、理知的で硬くなりがちな情報セキュリティの専門性を、温かみのある「守られている」という感覚で伝えています。さらに色彩計画、ピクトグラム、書籍のエディトリアルデザイン、プレゼンテーション規定へと展開し、一貫性があり長く運用できるブランド応用システムを整えています。
Design Concept
ロゴを変えずに、NICS は何を解決する必要があったのか?
NICS が向き合っていた課題は三つありました。既存のロゴは変えないこと、視覚的な印象が古くなっていること、そして伝統的で堅い印象を持たれがちな一方で、市民への親しみやすさも求められていることです。
- NICS にはすでにロゴがあり、Hand-Heart の制作物ではありません。このロゴを変えないことが、本プロジェクトの前提でした。
- 2024年8月の補助グラフィックの初稿では、まず既存のグラフィックに必要な更新の方向性を整理しました。技術的な印象を強めることも、その一つです。
- 政府機関には伝統的で堅い印象がつきまといがちで、NICS のブランド応用には市民への親しみやすさも求められていました。
NICS のブランド応用の要件は、どのように整理されたのか?
まず事前のヒアリングと調査を通じて、NICS の要件を「科学技術と技術力」「市民への親しみやすさ」「安全と安心」の三つの方向に整理し、同院の五つの中核価値である安全、技術、主体性、レジリエンス、信頼とそれぞれ対応づけました。この三つの方向が、その後すべての補助グラフィック案を検証する基準になっています。第1版の初稿では、テクノロジーパネル、情報のチェーン、グラデーションといった情報を表す記号を出発点に、デザイン思考で形を変換し、4種類の補助グラフィックを展開しました。
補助グラフィックは、二つの方向性からどう一つのシステムにまとまったのか?
2024年8月の第2版の初稿では、二つの方向性を提示しました。A案「信頼を共に築き、安全をスマートにつなぐ」は、ブランドの六角形を変形させ、グラデーションで市民とのつながりを感じさせる個性を表したものです。ロゴを手やバックル、チェーンと組み合わせて「安全」を、包み込むように抱く形や信号と組み合わせて「安定」を、屋根の形の盾や両手で包んだハートと組み合わせて「安心」を表しています。B案「世代をつなぎ、安全を守る」は、既存の造形を単位に分解し、デジタル記号として組み直すことで、デジタル世代を守るという意味を込めました。
このページに掲載した完成形と見比べると、ロゴに手やチェーン、ハートなどを組み合わせたアイコンや、六角形のグラデーションから展開したグラフィックが見られます。正式なシステムに引き継がれているのは、A案の六角形のグラデーションと、「安全・安定・安心」の三つの場面を表すイメージです。
ガイドラインとプレゼンテーションのテンプレートは、どのように仕上がっていったのか?
補助グラフィックが固まった後、補助グラフィックの規定、ブランドの色彩計画、書籍の規定を一つのガイドラインにまとめました。2024年8月末(ファイルの日付による)に第1版が完成し、9月の版でプレゼンテーションのテンプレートを加え、10月上旬には第5版まで進めています。その間、書籍の表紙や広告のシミュレーションも並行して試作しました。このページで見られる応用例は、文書のレイアウト、書籍『企業網路安全指引』(企業向けネットワークセキュリティの指針)の表紙、プレゼンテーションのテンプレート、ウェブページの画面、バナースタンドです。
NICS の補助グラフィックとガイドラインは、それぞれ何のためのものか?
補助グラフィックは技術的な印象と市民への親しみやすさという要件に応えるため、ガイドラインは書籍やプレゼンテーションなどの応用で一貫性を保つためのものです。
- 補助グラフィックは既存ロゴの六角形を基礎に、グラデーションと構造の変化を加えています。視覚的に技術的な印象が足りないという課題に応えるためです。
- 提案の A案は、六角形の変形とグラデーションで市民とのつながりを感じさせる個性を表しました。IT企業にありがちな冷たいイメージから抜け出すことが、その狙いです。
- 完成形と見比べると、システムには A案の三つの組み合わせのイメージが引き継がれ、「安全」「安定」「安心」をそれぞれ表しています。
- A案・B案とも「科学技術と技術力」「市民への親しみやすさ」「安全と安心」の三つの方向に沿って設計しており、提案には A案で安心・安全・安定の感覚を表すことが明記されています。
- 補助グラフィックの規定、色彩計画、書籍の規定を一つにまとめ、プレゼンテーションのテンプレートも加えました。媒体が変わっても識別性と親しみやすさを保つためです。
NICS の事例は、どのような機関や法人の参考になるのか?
機関や組織が次のような状況にある場合は、NICS の事例の進め方を参考にできます。
- 既存のマークは残したいものの、文書やプレゼンテーション資料が古く見える場合は、マークの形をもとに補助グラフィックを展開する方法を参考にできます。
- 業務が技術寄りで理性的な印象を持たれがちな一方、市民には身近に感じてほしい場合は、まず要件をいくつかの方向に整理し、それぞれのグラフィックで応えていく進め方が参考になります。
- 書籍、プレゼンテーション資料、ウェブサイトを別々の担当者が制作している場合は、補助グラフィック、色彩計画、書籍の規定、プレゼンテーションのテンプレートを一つのガイドラインにまとめる方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考にする際は、まず要件を整理し、次に補助グラフィックを展開して各グラフィックがその要件に応えているかを確かめ、最後に色彩・書籍・プレゼンテーションの規定をまとめる順に進めるとよいでしょう。
既存のロゴを生かして補助グラフィックと応用規定を展開する考え方は、コーポレートアイデンティティ(CIS)のページで紹介しています。





完了時期 ゼネラルマネージャー プロジェクト企画 デザインリーダー デザイナー
2025.12 徐志揚 蕭婉智、呂宜家 李奕臻、潘東 吳俊賢、黃胤展、謝心怡、王啓明