このチェックリストは発注側のためのものです。サステナビリティレポートの難しさは、資料が足りないことではありません。資料が多すぎ、時間が足りず、関わる人が多すぎることです。以下の七つのまとまりを発注前に整理しておけば、よくある三つの結末を避けられます。60 ページあたりで体裁が崩れる、公開一週間前になっても数字を直している、三種類の版で説明が食い違う——この三つです。手心と協働する場合に限らず、どの設計チームにも当てはまります。
一、報告の範囲とフレームワーク
- 報告年度、開示フレームワーク(GRI、SASB、TCFD または主管官庁の規定)、第三者保証の要否。フレームワークが章立ての骨格を決め、デザインはそれに従います。
- 昨年版のデータと印刷物を各 1 部。継続と刷新の比率は、初回打ち合わせで決めるべき事柄です。
- 言語:中国語、英語、または二言語の分冊。英語版は中国語版より 15–25% ページ数が増えるのが通常で、日程に余裕が必要です。
二、必要な版の種類
| 版 | 主な読者 | 使用場面 | 読了時間 |
|---|---|---|---|
| 完全版レポート | 主管官庁、評価機関、機関投資家 | 正式開示、ESG 評価、デューデリジェンス | 数十分以上 |
| ダイジェスト版 | 顧客、サプライチェーンのパートナー、求職者 | 提案書の添付資料、採用説明、展示会での配布 | 約 5 分 |
| アニメーション版 | 一般の方、SNS、社内の従業員 | 公式サイト、SNS、株主総会、社内研修 | 2–4 分 |
三つの版が同じビジュアル言語とデータを共有します。一度に計画して三種類を出力するのが最もコストを抑えられます。別々の業者に分けて発注すると、ほぼ確実に「三つの文書で説明が食い違う」状態になります。
三、データの責任
- 各章のデータをどの部門が提供し、窓口は誰か。サステナビリティレポートでは提供部署が十を超えることも珍しくなく、名簿がなければ誰も催促できません。
- 内容確定日:テキストとデータがそれぞれ何日以降変更されなくなるか。実務では「構成を先に決め、内容は後から埋める」のが通常ですが、最終期限は必要です。
- 図表の元データの形式(Excel、システムからの書き出し)と、公開の可否。
四、既存の識別と規範
- ブランド識別マニュアル:カラー、書体、アイコンのスタイル。レポートのビジュアルは既存の識別を引き継ぐべきで、別の体系を作るものではありません。
- 昨年のレポートの図表における配色順序とアイコン。読者がすでに慣れている場合、変更には理由が必要です。
- グループまたは親会社の統一規範(ある場合)。
五、校正とバージョン管理
- 最終校正の責任者:数値、単位、年度、前年との整合性。これは設計側が代われる責任ではありません。
- 修正の送り方:一つの窓口が取りまとめて送る運用をおすすめします。十の部門がそれぞれ同じページを直す事態を避けられます。
- バージョン番号の付け方のルール。「最終版」「最終最終版」を避けるためです。
六、納期のマイルストーン(公開日から逆算)
| マイルストーン | 公開日前 | 説明 |
|---|---|---|
| 印刷と動画の出力 | 2–3 週間 | 印刷の面付け、用紙と環境仕様の確認、PDF と動画のフォーマット |
| 全体の確定 | 4–5 週間 | 最終校正が完了し、以後は誤字のみ修正し内容は変更しない |
| 全体の編集と図表 | 8–12 週間 | 承認された版型に沿って全体を仕上げる。修正回数を含む |
| ビジュアル提案の承認 | 12–14 週間 | 表紙、本文の版型、図表のスタイルを確定してから全体に展開する |
| 構成とデータの棚卸し | 14–16 週間 | 章立ての構造と読みの動線 |
以上は中規模のレポート(100–150 ページ、中国語版)の目安です。二言語版、保証が必要な場合、アニメーション版は別途算定します。公開日がすでに決まっている場合は、最初に設計側へお伝えください。逆算してはじめて、どの日に確定すべきかが分かります。
七、読者は誰か
投資家は数字だけを見て、求職者は入社する価値があるかを知りたがり、顧客はサプライチェーンのリスクだけを気にします。今年もっとも影響を与えたい読者を二〜三種類挙げてください。それが、ダイジェスト版に何を残すか、アニメーション版で何を語るかを直接決めます。
付録:上場企業の申告マイルストーンと責任の境界
上場企業のサステナビリティレポートには法定の日程と必須の記載内容があります。デザインの日程はこれらのマイルストーンから逆算する必要があり、責任も発注前に分けておくべきです。以下は台湾証券取引所および櫃買中心(タイペイ・エクスチェンジ)の「サステナビリティレポートの編製と申告に関する作業弁法」にもとづく整理です。実際の条文は主管官庁の最新の公告が基準となります。
| 項目 | 規定 | デザインへの影響 |
|---|---|---|
| 申告期限 | 毎年 8 月 31 日までに、報告書ファイルとウェブサイトのリンクを指定システムへ申告する | 印刷と PDF の確定は遅くとも 8 月中旬までに完了する必要がある。「六、納期のマイルストーン」の公開日はここから逆算する |
| GRI 内容索引 | 報告書内に GRI スタンダードに対応する内容索引を開示する | 索引表は版面の一部であり、ページ数を確保し、章番号と連動させる |
| 業種別サステナビリティ指標 | 業種別の附表に従い開示を強化する | 指標の表が多く数字も密なため、図表のルールを最初に一度で決める |
| 気候関連情報 | 専用の章として開示する | 章立ての骨格に専用章の位置を確保し、他の章に統合しない |
| 第三者保証 | 各開示項目について第三者の保証・確認を得たかを報告書内に明記する | 保証の範囲と表記方法を編集前に確定する。保証機関の修正意見は確定日に影響する |
誰が何に責任を持つか
| 事項 | 企業(サステナビリティ部門と各データ部門) | コンサルタント/保証機関 | 設計側(手心) |
|---|---|---|---|
| データの正確性と網羅性 | 責任を負う | コンサルタントが棚卸しを支援し、保証機関が検証する | 企業に代わって数字を保証しない。前後の不一致を見つけた場合は指摘する |
| フレームワークと索引の対応 | 章と索引の対照を提供する | コンサルタントが基準の解釈を担う | 索引を版面に組み込み、ページ番号を校正する |
| 情報設計と読みの動線 | 承認する | — | 提案と計画に責任を持つ |
| 図表、編集、ダイジェスト版とアニメーション | 承認する | — | 制作と各版の連携に責任を持つ |
| 保証意見 | 保証機関に委任する | 保証機関が発行する | 発行しない。設計データの提供と修正で協力する |
| 申告作業 | アップロードとウェブサイトのリンクに責任を持つ | — | 規格に適合した PDF ファイルを提供する |
一言でいえば、手心は資料を「分かる・読み切れる・伝わる」状態にする役割を担い、数字の正確性と保証意見は企業と保証機関に属します。この線を発注前に引いておけば、公開一週間前に「誰が直すのか」という争いは起きません。
よくある質問
ダイジェスト版やアニメーション版だけの依頼はできますか。
できます。完全版が他社によって完成している場合、既存の内容にもとづき、取捨選択と見せ方を組み直せます。ただしビジュアル言語を共有するには、完全版の設計データを入手できることが前提です。
表紙は必ず昨年と変えるべきですか。
必ずしもそうではありません。表紙は読者がページを開くかどうかを左右します。重要なのは、ビジュアル戦略がその企業の業種としての性格と一致していることです。半導体の後工程では回路のイメージ、光電業界ではイラストによる語り——いずれも、まず企業がどんな存在かを読み解いてから決めています。
受賞はデザインと関係がありますか。
賞は企業自身のものです。ただし受賞するレポートは、情報開示の網羅性とコミュニケーション効果の双方が審査で認められたことを意味し、コミュニケーション効果はデザインが担う部分です。手心の作品は 2015–2025 年に台湾企業サステナビリティ賞を累計 37 座受賞しています。年ごとの明細はESG デザインのページをご覧ください。
整理が終わって相談したくなったら、ご要望をお送りください。2 営業日以内に、サステナビリティレポートの担当者からご返信します。